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教科書には絶対に載らない歴史の面白話が満載、『夜明けあと』!故 星新一氏の名著!

突然だが、この文を読んでいる読者の中で、歴史が好きな読者はどのくらいいるだろうか?

実のところ、さほど興味がない読者の方が多いだろう。或いは学生時代の授業を思い出して、むしろ嫌いだという読者の方が多いかもしれない。

だが、私の推す『夜明けあと』という作品は、そんな読者にもおすすめしたい作品である。

この本の著者は、星新一。どこかで聞いたことのある名前だと思った読者もいるだろう。そう、あのショートショートのSF作家、星新一なのである。実は彼の父親は実業家で、そんな父親のことを詳しく知る為に彼の生きていた明治時代のことを調べたことがあったのだ。その中で明治という時代に関心をもち、この『夜明けあと』という本を著したのである。

そして、この本。一見、ただの歴史の事実を並べ立てただけなのだが、妙に面白いのである。だが、この言葉だけではただの年表集と思われるだろう。そこで、僭越ながらこの本の紹介をさせて頂こうと思う。

『夜明けあと』の特徴

前述の通り、この本は物語というよりも歴史の事実を並べただけのものだ。その舞台になっているのは、ペリーが浦賀に来航する1853年から明治天皇が崩御する1912年までのおよそ60年間の出来事である。

それらは一体どこから持ってきたのかというと、当時の瓦版や新聞記事、はたまた政府が出した様々な命令である。

読売新聞、毎日新聞など、現在でも存在しているものもあるが、現在ではとっくに廃刊となった新聞の記事もある。例えば、浪花新聞、朝野新聞、東京曙新聞など20世紀まで生き残ることができなかった新聞記事の出来事も載せているのだ。

内容として取り上げているのは、歴史的に重大な出来事や堅苦しいものばかりではない。
例えば…

  • 明治4年(1871) 人家の傍では軍隊はラッパを吹くのを控えること。人が驚く。…兵部省(現在の防衛省)達
  • 明治9年(1876) 関西で人力車が増え、乗り賃の値下げ競争。東京にコタツ付きの人力車出現…東京日日新聞
  • 明治16年(1883) 兵庫県に生まれつき舌が二枚の人あり。不便なので一枚を病院で切断。無事に退院、喜んでいる。…朝野新聞
  • 明治26年(1893) 東京弁護士会が創立。予想通り発言者が多く、大声ばかりの混乱の会議…東京日日新聞

他にも、ドイツ人のオンナスキーという男が銭湯の女湯を覗いたとか、福岡の滝から竜が出たとか、仲の良かった狐と犬が井戸で心中したとか、クスリとしたり不思議に思えたりする出来事が載っており、普通の歴史書とは明らかに違う。

しかも、その内容にいちいち出鱈目だの、真実だの、作者の考えは指摘はほとんどないので、楽しみながら読める。

この本から見える『明治』

私は元来歴史が好きな方なのだが、この本を通して伝わってくるのが、『明治の人々の一生懸命さ』である。

当時の日本はイギリスやドイツと比べると後進国であった。しかもバリバリに帝国主義の時代なので、油断すると植民地にされてしまう。(実際中国は香港を分捕られ、100年近く返してもらえなかった)そんな中で明治の人々は官民一体となって欧米諸国に追いつき、追い越そうとしていたのである。

西洋人の法律や生活を何とか真似しようとしたが、江戸時代までの生活スタイルから抜け切れず、結果的には猿真似のようになってしまう。現代人や西洋人からは一見滑稽に見られたとしても、めげずに努力を続けた。しかし、そのおかげで明治の終わり頃には、日本はすっかり列強の仲間入りを果たしていたのである。

それから二度の世界大戦を経て、一度はボロボロに敗れたものの、そこからさらに復興を果たした。

現在日本は世界第三位の経済大国だが、その時の基礎がまさに『夜明けあと』で描かれた時代、明治の人々の努力の結晶なのである。

この文の読者に伝えたいこと

2020年に東京オリンピックの開催が決定され、国は学校での英語教育に力を入れるなど、国際化の波は収まる気配はない。その中で、海外の人々との対話も増えていくことであろう。しかし、その中で読者の諸君は日本国民としてのアイデンティティは持ち合わせているだろうか?

少なくとも諸外国の人々は、何かしらのアイデンティティは持ち合わせている。

現代の日本国民は、戦時下の強制的な愛国心強制が戦争に突き進めさせた経緯から、そういったことにアレルギーを持っているようだ。しかし、それでは外国人に自国のことを話せない、自国のことが話せずして対話もできる訳がない。国民みんなが対話できなければ、日本は孤立してしまうだろう。

では、そういったアイデンティティの構築にはどうすれば良いか。歴史の勉強である。とはいえ、戦時下の日本の美談を持ち出すのはあまりふさわしくない。当時の日本は明らかに全体主義が行き過ぎており、まともな国家とはいえない状況だったからだ。

ならば、そういった乱れがなかった明治期の歴史を学び、そこからアイデンティティを得れば良い。この時期の日本に関しては、世界でもあまり悪く言われておらず、比較的抵抗なく勉強できるだろう。

もし、その時にこの『夜明けあと』が教材の一つとなれたなら、この本のファンとしてこれほどうれしいことはない。

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